1 弁護士と相談→方針決定
原則として事務所に来ていただき,弁護士と面談していただきます。
面談時に必要なものは,以下のものです。
・「借金」等債務の内容がわかる資料(ない場合は簡単な借入先のメモでも可)
例えば,「請求書」,「裁判所等の手続きの書類」,「クレジットカード等のカード」等
・ご本人確認資料(免許証やマイナンバーカード等)
ご依頼いただく際には,ご本人確認をさせていただく必要があります。
・認め印(「シャチハタ」式のものは不可)
ご依頼いただくときには,「委任状」を作成していただきますので,認め印が必要です。
(住宅ローンがある場合)
・住宅ローンの残高がわかる資料(返済予定表等)
・担保設定のわかる資料(登記簿謄本等)
←住宅ローンの内容(担保設定状況や返済状況等)によっては,住宅ローン特則を利用しての個
人再生ができない可能性がありますので,その確認に必要です。
上記の書類についてはできるだけご準備いただきたいですが,もし手元にない場合でも,相談に来て
いただいても結構です。
ご相談時に,「債務の内容」や「ご本人の生活状況」等を聴き取り,さらに,「ご本人の希望」も確
認したうえで,債務整理の方針を決定します。
2 個人再生を選択するケースはどんな場合か
ここまでは,破産と同じです。
当職は,以下の場合以外は,基本的に,「『個人再生』ではなく,『破産』」をお勧めしています。
(破産でなく,個人再生を選択する場合)
(1)住宅ローンがあり,住宅ローン特則を利用して自宅を残したいというご希望の時
←個人再生は,基本「自宅を残したい方のための制度」ですので,破産では原則残せない自宅を
残す希望のある方の選択肢となります。
(2)破産手続きを進めて,免責決定を得ようとしても,それが困難と予想される時
←具体的には,破産法252条に定める「免責不許可事由」があり,しかも「裁量免責」を得るこ
とも難しいと判断される場合です。
最近の例でいうと,「ギャンブルやFX等への投資」,「『浪費』にあたるような飲食や物品
購入」が多額にあり,借入のほとんどを占める場合等は,免責決定を受けるのが難しいことがあ
ります(とくに前者「ギャンブルやFX」)。
しかし,それでも破産で免責決定を受けられる可能性もないではありませんので,破産手続き
で進める場合もあります。
以上
上記の方針で当職が破産をできるだけ勧めるのは,破産でも,個人再生でも,その手続きをとれば
「信用が低下して,今後の金融機関の利用が一定期間難しくなる」という意味では,そのデメリット
はほとんど同じ(CIC等の信用情報機関に登録されて,その信用情報を利用する金融機関からは一定
期間融資が受けられない等)だからです。
であれば,より経済的な負担の少ない「破産」を選択したほうが,借金を負った方の「経済的更生
(立ち直り)」が早いと考えています。
但し,最終的に「方針を決定する」のは「ご本人であり,弁護士ではありません」。
弁護士は,ご本人の選択に従い,手続きを進めていきます(債務者の方の状況等によっては,「ご本
人の選択された方法につき,弁護士としては責任が持てない」と判断して,受任できない場合もありま
す)。
3 受任(弁護士に事件の処理を委任すること)→「受任通知」発送
個人再生事件を弁護士が受任した場合,まずは各債権者に「受任通知」を即発送(原則)します。
この「受任通知」は弁護士が「債務者の代理人として個人再生手続きに入ることになったこと」をお
知らせし,「今後は債務者本人でなく,代理人である弁護士に対し連絡をするように」と依頼する文書
です。
この文書が届けば,通常の債権者は,債務者本人には連絡しなくなります。
また,この連絡以降は,「各債権者への弁済はストップ」(住宅ローン特則を利用する場合は,住宅
ローンだけは返済を続けていただきます)させます(逆に弁済してしまうと,「偏波弁済」となります
し,個人再生における債権額も確定できませんので,手続きを進める上でマイナスとなります)。
よって,この段階で,債務者は,これまで苦しんでいた債務の弁済に追われることがなくなります。
つまり,弁護士に委任した段階で,ある意味,「債務の苦しみから逃れることができる」のです。
このメリットは,「絶大なもの」といえると思います。
ですので,受任通知は原則として「即」発送します(但し,いろいろな前提条件により,発送の時期
をずらすこともありえます)。
4 個人再生申立に向けて書類等の準備→裁判所に個人再生申立て(受任通知から2~3カ月程度)
弁護士から送付した「受任通知」では,各債権者に債権額の回答(「債権調査票」と言います)を求
めます。
その回答をふまえて,弁護士は,裁判所に提出する債権者一覧表を作成します。
そして,債務者の方にも様々な書類等の準備(具体的には説明しませんが,正直なところ,それほど
難しい書類等はないと思います)を依頼し,準備が整ったところで,最終的に弁護士と打ち合わせをし
て,裁判所への個人再生申立書類を完成させます。
その後,完成した個人再生申立書類一式を提出し,裁判所に個人再生申立てを行います。
5 個人再生申立て後の流れ
→「開始決定」(個人再生申立てから順調に行って1月以内)
→「債権届出期限」(債権者から債権額を申出)を経て「再生計画案提出」(開始決定から2カ月強)
→「再生計画の認可決定」(再生計画案提出から1カ月半)
→「認可決定が確定した後,翌々々月から弁済スタート」
(但し,上記の必要期間はめどであり,事案により変更もあります)
以上,まとめると,順調に進んだ場合,「申立てから約半年で認可決定」が出て,その3カ月後(申立
てからみると9~10カ月後)から再生計画に基づく弁済が開始されることになります。
6 個人再生手続きのポイント
(1)返済額
簡単にいうと,個人再生は,債務(別途返済を続ける住宅ローンの債務額は除いた債務額。以下
「債務」と書いた場合は,住宅ローンの債務額を除いた債務額です)を圧縮したうえで,将来の利息
もなく,元金のみを弁済する手続きです(その弁済が終わった後は,残りの債務は免除されます)。
その効果は下記のとおり,絶大であり,客観的にみると「到底返済不能」な状況から解放され,再
生計画に基づく弁済が終了した後は,「債務がない」状態となります。
・再生計画における返済額の決め方
以下のアとイのうち,高いほうが,個人再生計画での最低弁済額となります。
ア.「5分の1ルール」
再生計画案で返済する債務の総額は,原則として,再生計画案にのせる債務総額の1/5です。
但し,債務総額が1500万を超えると,1/5より圧縮率は以下のとおり,大きくなります。
・ 債務が100万未満の場合 債務額をそのまま弁済(但し,将来利息は支払う必要なし)
・ 債務が100万以上500万以下の場合 100万円
・ 債務が500万を超え,1500万以下の場合 債務額の1/5
・ 債務が1500万を超え,3000万以下の場合 300万
・ 債務が3000万を超え,5000万以下の場合 債務額の1/10
(債務が5000万を超える場合は,個人再生はできません)
イ.「清算価値の額」
個人再生では,ご自身の財産価値以上の弁済が求められます。
ですので,アで計算した金額以上に,財産をお持ちの場合は,イの金額となります。
財産には,以下のものが含まれます。
・ 現金や預金(積立含む)
・ 株式や投資信託などの金融資産
・ 保険の解約返戻金
←生命保険・医療保険等の保険を契約されている場合,その保険を解約した場合に受け取る
ことができる「解約返戻金」は財産と扱われます
・ 自動車等の動産
←よほど高価なものでない限り,家具や電化製品は金額を参入する必要はありません。
・ 退職金
←退職金の制度のある勤務先の場合,「申立て時に(自己都合で)退職すると仮定した場合
の退職金額」(見込額)も財産とされます。
但し,「退職が近々決定している場合」等を除き,原則,「退職金見込額」の1/8が財産価
値として参入されるのみです。
(2)上記返済額を3年で返済できるだけの家計状況か否か
個人再生では,破産(免責決定を受けられるかどうかの判断が大切で,主に「債務を負った経緯」
が問題となる)と異なり,「債務を負った経緯」よりも,「再生計画案に沿った弁済ができるか否
か」が手続きを進めるうえでのポイントとなります。
つまり,上の(1)で算定された弁済額を3年間で弁済する(制度上「5年」もありますが,実質上
はほとんど「3年」での弁済計画を求められます)かどうかが認可決定を受けられるかどうかの判断の
ポイントとなります。
よって,個人再生を選択された場合は,すぐに家計収支表をご作成いただき,再生計画で弁済が求
められる金額の余剰金(返済に回せる金額)が出るようにしていただく必要があります。
6 最後に
個人再生は,破産手続きよりも色々なパターンがあったり,裁判所に提出する書類も多数あったりし
ます。
よって,上記に止まらず,色々なパターンになりうる点は,ご理解ください。
ですので,逆にいうと,色々なパターンを経験している経験値の高い事務所に依頼して,手続きを進
める必要がありますので,ぜひ,当事務所を選択肢のひとつとしてください。