1 弁護士と相談→方針決定
原則として事務所に来ていただき,弁護士と面談していただきます。
面談時に必要なものは,以下のものです。
・「借金」等債務の内容がわかる資料(ない場合は簡単な借入先のメモでも可)
例えば,「請求書」,「裁判所等の手続きの書類」,「クレジットカード等のカード」等
・ご本人確認資料(免許証やマイナンバーカード等)
ご依頼いただく際には,ご本人確認をさせていただく必要があります。
・認め印(「シャチハタ」式のものは不可)
ご依頼いただくときには,「委任状」を作成していただきますので,認め印が必要です。
ご相談時に,「債務の内容」や「ご本人の生活状況」等を聴き取り,さらに,「ご本人の希望」も確
認したうえで,債務整理の方針を決定します。
2 受任(弁護士に事件の処理を委任すること)→「受任通知」発送
破産事件を弁護士が受任した場合,まずは各債権者に「受任通知」を即発送(原則)します。
この「受任通知」は弁護士が「債務者の代理人として破産手続きに入ることになったこと」をお知ら
せし,「今後は債務者本人でなく,代理人である弁護士に対し連絡をするように」と依頼する文書で
す。
この文書が届けば,通常の債権者は,債務者本人には連絡しなくなります。
また,この連絡以降は,「各債権者への弁済はストップ」させます(逆に弁済してしまうと,「偏波
弁済」といって,破産手続き上,マイナスとなりますので,弁済禁止となります)。
よって,この段階で,債務者は,これまで苦しんでいた債務の弁済に追われることがなくなります。
つまり,弁護士に委任した段階で,ある意味,「債務の苦しみから逃れることができる」のです。
このメリットは,「絶大なもの」といえると思います。
ですので,受任通知は原則として「即」発送します(但し,いろいろな前提条件により,発送の時期
をずらすこともありえます)。
3 自己破産申立に向けて書類等の準備→裁判所に破産申立て(受任通知から2~3カ月程度)
弁護士から送付した「受任通知」では,各債権者に債権額の回答(「債権調査票」と言います)を求
めます。
その回答をふまえて,弁護士は,裁判所に提出する債権者一覧表を作成します。
そして,債務者の方にも様々な書類等の準備(具体的には説明しませんが,正直なところ,それほど
難しい書類等はないと思います)を依頼し,準備が整ったところで,最終的に弁護士と打ち合わせをし
て,裁判所への破産申立書類を完成させます。
その後,完成した破産申立書類一式を提出し,裁判所に破産申立てを行います。
4 破産申立て
→「破産決定」(破産申立てから順調に行って1月以内)
→「免責決定」(破産決定から2カ月強)
(但し,上記の必要期間のめどは,同時廃止事件の場合です)
(1)破産事件の手続きは,「同時廃止事件」と「管財事件」があります。
破産事件の手続きは,「同時廃止事件」と「管財事件」の2つの進め方がありますが,個人の場合は,
基本的に「同時廃止事件」での申立てを目指します。
同時廃止事件は,「破産手続きの『開始』と『廃止』を同時に決定」する事件であり,簡単に言う
と,「簡便」に進む手続きです。
一方,管財事件は,「管財人」という立場の弁護士(申立てをする代理人弁護士と異なる弁護士)が
破産手続きを進めます。
具体的には,管財人は,破産者の財産を「換価」(お金に換える)たり,破産者の破産に至った事情
を調査したりします。
そして,破産者は,「管財人の報酬分の予納金(最低でも20万円かかります)を負担する必要があ
る」点,「手続きに時間と手間がかかる」点,同時廃止事件よりも少し負担が大きくなります。
(2)「同時廃止事件」と「管財事件」の振り分け
簡便なほうの「同時廃止事件」として申立てをした事件も,裁判所の判断(破産事件の進め方はあく
まで,裁判所が決定します)で「管財事件にして,管財人をつけて進めるように」という指示が出され
ることがあります。
つまり,以下のような場合は,「管財事件として申立てをするように」という裁判所の指示があらか
じめあったり,同時廃止事件で申立てをしても「管財事件として処理するように」という指示がされる
場合があります。
a.個人として事業を行っている(あるいは直近まで行っていた)場合
b.財産がある程度ある場合
具体的には,各財産(預金なら各口座の合計額,保険も同様に保険の解約返礼金の合計額等)ご
とに20万以上と評価される財産がある場合です。
c.借金をした理由につき,浪費(ギャンブルや投資,高額な飲食や多額の商品購入等が多額にある
場合)等の問題がある場合や以前に破産等をすでにされた経験のある方の場合
上のaとbの場合は,「管財事件とするように」という指示が裁判所から事前通告としてありますので,最初から管財事件として申立てをせざるをえません。
しかし,cの場合は,管財事件とならない場合も結構ありますので,同時廃止事件での申立てにチャレンジすることのほうが多いです。
(3)同時廃止事件の流れ
裁判所が破産申立書類をチェックし,とくに問題ないと判断すれば,破産手続きの「開始」と「廃
止」を同時に決定します(このふたつの決定が「同時」にされるので,「同時廃止事件」といいま
す)。
そのうえで,裁判所から各債権者に「免責決定についての意見を求める照会(申述期限は約2カ
月)」がされます。
その裁判所からの照会に対し,債権者からとくに意見がなければ(最近は金融機関であれば,ほと
んどの債権者は意見は出してきません),回答期限の2カ月が経過した後,免責決定となります。
免責決定は,文字通り,「責任を免れる」=「債務の弁済義務がなくなる」という決定であり,こ
の決定があって初めて,破産者は,債務の弁済義務が無くなります。
逆にいうと,免責決定を得られない債務者もあり,そのような事態にならないように,弁護士は最
大限の努力をすることになります。
(4)管財事件の流れ
もともと管財事件として申立てがされた破産事件や裁判所からの指示で「管財事件」となった事件
については,裁判所が管財人弁護士を選任します。
そして,管財人弁護士と債務者及び申立代理人弁護士が面談したうえで,裁判所は破産開始決定
し,管財人は破産業務を開始します。
それと同時に第1回債権者集会(破産開始決定から約3月後)に指定されます。
管財人が破産手続きで行う業務は,具体的には,以下のものが多いです。
(a)破産者に換価(お金に換える)すべき財産がある場合は,管財人が換価する。
そのうえで,債権者などに配当ができるか検討していく
(b)破産者に免責不許可事由があり,その調査が必要な場合は,管財人が調査のうえ,裁判所に
報告
→裁判所は管財人からの調査報告を受けて,免責許可をするかどうか検討
換価すべき財産がない場合は,ほとんどの場合,第1回債権者集会で「異時廃止」という形で破産手
続きが終了し,免責許可を与えるかどうかを裁判所が判断します。
事案によりますが,免責許可が与えられることが多いです
逆に,裁判所が「免責許可が難しい」と考えている場合,管財事件にする前に,「この事件は免責
は難しいので,破産でなく,個人再生等を検討ください」という指示が事実上,申立代理人弁護士の
ところにきます。
よって,「管財事件となり,普通に進めば,だいたいは免責許可となる」というのが,弁護士の経
験上からいえます)。
換価すべき財産がある場合は,換価に時間がかかるケースもあり,債権者集会が約3カ月ごとに繰り
返され,1年以上,時間を要することがあります。
また,換価した後,債権者に対し管財人から配当がされる場合は,配当の手続きに約半年かかりま
す(その間,だいたい3カ月ごとに債権者集会を開催する)。
なお,「換価すべき財産」というと,「なんでもかんでも破産者の財産はとられてしまう」という
イメージをお持ちの方も多いですが,実際は,「自由財産の拡張」と言って,通常の生活に必要な範
囲の財産(「家電などの家財」や「一定程度の評価金額までの預金や保険,車」等)のほとんどはそ
のまま破産者が保持することが可能な場合が多いです(とくに財産価値として,金銭的な評価額が,
総額で99万円の範囲内の場合)。
以上が,破産事件のだいたいの流れです。
但し,破産事件は色々な処理のバターンがありますので,上記と異なる流れとなることもありえますので,その点は,ご承知ください。
以上